ノンラーの下で、逢いましょう。


ノンラーとは、ベトナムの人たちが頭にかぶっているあの小さい傘のような帽子のことだ。ベトナム料理店「イエローバンブー」では、このノンラーが電球のランプシェードとして使われている。テーブルを照らす電球のやわらかい光、その橙色の光で空間にぼんやりと浮かび上がるノンラーを眺めていると、各テーブルにそっとベトナムの人が付き添っているようにも見えてくる。

お店のインテリアの屏風や壁に掛けられた民芸品など、すべて現地ベトナムでオーナーの南 雅和さんが直接仕入れた。コート掛けなどは自分でデザインまでして注文して作らせたものだ。

仕事関係でベトナム暮らしの長かった南さんにとって、日本とベトナムはともに故郷と呼べる存在。「日本には中国、フランス、世界の味がなんでもある。でも日本のベトナム料理店の味は、本当のベトナムの味と何かが違う。もっと美味しいし、みんなで気軽に味わえるし、何よりも食べているとしあわせになれる」。日本の人に料理だけでなくベトナムそのものをもっと味わって欲しい、その願いが彼をこのお店づくりへと向かわせた。

それからは、料理はもちろんベトナム文化まで再び学び直した。そして6 年余の準備期間を経て、「イエローバンブー」は誕生した。



日本とベトナムをつなぐ場所。


イエローバンブーは、いつでもあなたをベトナムのごちそうで、温かく迎え入れてくれるはずです。

ノンラーの下で味わうフォーや生春巻き、バインセオなどのポピュラーなベトナム料理もここではひと味違う。しかもいろいろ食べられるようにと、ほどよい量で出てくるのもうれしい。家族連れや女性だけでも気軽に来て欲しいという配慮が伝わってくる。落ち着いた空間の中で過ごしていると、まだ訪れたことのないベトナムが、なぜか懐かしく感じる。

ベトナムは南北に伸びた細長い国だ。日本と似ている。北に首都ハノイがあり、南にはベトナム最大の商都ホーチミンがある。その2 都市間、総距離1,560 キロを走る高速鉄道に日本の新幹線が採用された。ベトナム政府は2020 年までの開業を目指すという。美しくのどかな風景の中を走る“夢の超特急”は、ベトナムの人々の瞳にどんなふうに映るのだろうか。発展を遂げるベトナム。日本とベトナムの距離は、確実に近づいている。

店名のイエローバンブーは、竹のさおが黄色で少しだけ緑色の縦縞が入っている竹に由来している。日本では珍しいこの竹の名称は、金明孟宗竹(きんめもうそうちく)。ベトナムでは縁起のいい竹とされ、古くから愛され重用されてきた。竹は生命力があり、どんなに厳しい環境でもまっすぐに力強く伸びてゆく。内幸町の地にやっと芽を出したばかりのイエローバンブーと、その姿が重なってくる。